国際刑事裁判所(ICC)の独立性を堅守し、法の支配の貫徹を求める会長声明(2025年9月25日)


国際刑事裁判所(ICC)の独立性を堅守し、法の支配の貫徹を求める会長声明



1  国際刑事裁判所(International Criminal Court。以下「ICC」という。)は、「国際社会全体の関心事である最も重大な犯罪」(集団殺害犯罪、人道に対する犯罪、戦争犯罪、侵略犯罪)に問われる個人を訴追・処罰するために設立された国際刑事法廷である(締約国125か国)。日本は、2007年(平成19年)10月にICCに加盟し、これまで3名のICC判事を輩出し最大の分担金拠出国となるなど、大きく貢献してきた。
近年、ICCの独立性が重大な危機にさらされ、「法の支配」から「力の支配」へと逆行する動きが生じている。

2  少なくとも2022年(令和4年)2月24日以降に、子どもを占領地域からロシア国内へ不法に移送したことなどの戦争犯罪に関与した疑いがあるとして、2023年(令和5年)3月、ICCがロシア連邦のプーチン大統領に対する逮捕状を発付したところ、ロシア連邦は、同逮捕状発付に関わったICCの検察官及び裁判官を指名手配するという措置を講じた。
    また、パレスチナ・ガザ地区での戦闘における戦争犯罪及び人道に対する犯罪への関与の疑いにより、2024年(令和6年)11月、ICCがイスラエルのネタニヤフ首相などに対する逮捕状を発付したところ、アメリカ合衆国は、2025年(令和7年)2月、ICCの職員等に資産凍結や入国禁止等の制裁を課す大統領令を発した。

3  これに対し、ICCは、赤根智子所長が「大統領令はICCの独立性と公平性を損ない、何百万人もの罪のない犠牲者から正義と希望を奪おうとするもので、深い遺憾の意を表明する。裁判所の機能を政治化しようとするいかなる試みも断固として拒否する」という旨の意見表明を行うなど、毅然とした姿勢を貫き続けている。
また、英仏独など79か国は「法の支配を脅かす」と非難する共同声明を発表した。しかし、日本政府は、この共同声明に参加しなかった。

4  ロシア連邦とアメリカ合衆国によるICCに対する報復的措置は、司法機関に対する不当な政治的圧力であり、司法の独立性の脅威となる許し難い攻撃にほかならない。このような「力による支配」が横行すれば、人間の尊厳を脅かす「国際社会全体の関心事である最も重大な犯罪」である残虐行為を法で裁くことが困難となり、ひいては、全ての権力を法で拘束することによって恣意的な権力行使を阻止する「法の支配」に基づく国際秩序の崩壊につながりかねない。
日本国憲法の前文には国際協調主義及び全世界国民の平和的生存権が掲げられ、第98条には国際法規の遵守が定められている。そして、日本政府は、「法の支配」に基づく自由で開かれた国際秩序の形成を外交政策の基本理念としてきた。そうであるのに、前述の共同声明に加わらないという日本政府のあり方を見過ごすことはできない。
そこで、当会は、日本政府に対し、国際社会において極めて重要な刑事司法機関であるICCが深刻な危機に直面している現状において、「法の支配」を貫徹させるために、ICCの独立性を脅かすあらゆる圧力に対し明確に反対し制裁措置の撤回を求めること及びICCに対する支持・支援を強化することを求めるものである。

      2025年(令和7年)9月25日

京  都  弁  護  士  会

会長  池  上  哲  朗



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