法制審議会に先行して議員立法による抜本的な再審法改正の実現を今、求める会長声明
1 昨年3月11日に超党派で結成された「えん罪被害者のための再審法改正を早期に実現する議員連盟」(以下「議員連盟」という。)は、本年5月28日に総会を開催し、刑事再審における証拠開示制度の整備や、再審請求審における検察官抗告の全面的禁止を含む、再審法の改正案要綱を承認した。そして、本年6月6日までに各政党内の手続を完了した上で、現在開会中の第217回通常国会に法案を提出し、成立させるとの方針を確認した。それにもかかわらず、本日現在、法案はいまだ国会に提出されていない。
2 当会が、本年3月5日付け「議員立法による速やかな再審法改正の実現を求める会長声明」を発出した後、法務大臣は刑事再審制度の見直しにつき法制審議会へ諮問し、本年4月21日から法制審議会刑事法(再審関係)部会が開催されている。しかしながら、上記会長声明において既に指摘したとおり、再審制度の在り方に関していわば「当事者」でもある法務省・検察官が主導する法制審議会において、抜本的な改正が速やかになされるとは考えがたい。
3 えん罪は、国家による最大の人権侵害である。43年間死刑囚であった袴田巖氏は、昨年9月26日の再審無罪判決により死の恐怖からは解放されたものの、今もなお拘禁症に苦しんでいる。さらに、救済までに膨大な年月を強いられることによるえん罪被害者の高齢化も深刻な問題である。62年間無実を訴えてきた狭山事件の石川一雄氏は、雪冤を果たせないまま、本年3月11日に86歳で亡くなった。大崎事件の原口アヤ子氏は、これまで3回も再審開始決定が出されながら検察官の抗告に阻まれ、間もなく98歳となる今も雪冤の日を信じて命を繋いでいる。検察官抗告の禁止や再審請求における証拠開示制度の創設、裁判官の期日指定等、議員連盟の提案する内容での法改正はまさに急務であり、法制審議会において年単位で議論している時間はない。まして、改革を求められる立場にある法務省が主導する法制審での議論が、立法府である国会による改革を遅らせるようなことは、あってはならない。
4 この間、全国の新聞各社は議員立法による速やかな再審法改正が必要だとする社説を相次いで掲載している。全国の各地方自治体議会が採択した再審法の改正等を求める意見書は、本年5月27日時点で661に達し、地方自治体首長の賛同署名も223となった。京都においても、昨年12月20日時点で京都府、京都市会を含む27自治体全ての議会で意見書が採択され、27自治体中19の自治体首長から賛同署名が寄せられている。速やかな再審法の改正こそが民意というべきであり、76年間変わらなかった再審法を改正するのは今しかない。まさに、国権の最高機関と立法府である国会を構成する国会議員の良識と見識が問われている。
5 よって、当会は、議員連盟が承認した法案につき、法制審議会に先行して国会に上程、可決成立させ、真に冤罪被害者に寄り添う再審法改正を今こそ実現するよう、強く求めるものである。
2025年(令和7年)6月12日
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