「結婚の自由をすべての人に」訴訟における5つの高裁判決すべてで違憲判断がなされたことを受けて、婚姻平等を実現する法整備を直ちに行うことを求める会長声明(2025年5月22日)
「結婚の自由をすべての人に」訴訟における5つの高裁判決すべてで違憲判断がなされたことを受けて、婚姻平等を実現する法整備を直ちに行うことを求める会長声明
大阪高等裁判所は、2025年(令和7年)3月25日、同性婚を認めていないことの違憲性が争われている「結婚の自由をすべての人に」訴訟の控訴審で、同性婚を認めていない現行の法制度は、現時点において、性的指向が同性に向く者の個人の尊厳を著しく損なう不合理なものであり、異性婚のみを保護することを目的とし同性婚を認めていないことに合理的な根拠はなく法の下の平等に反し、国会の立法裁量の範囲を超えており違憲である、との判断を下した。
これは札幌高裁判決(2024年(令和6年)3月14日)、東京高裁判決(同年10月30日)、福岡高裁判決(同年12月13日)、名古屋高裁判決(2025年(令和7年)3月7日)に続く5件目の控訴審違憲判決で、地裁判決を含めると10件目の違憲判決である(地裁では5件が違憲、1件が合憲判断で、高裁では1件が現在も審理係属中である。)。
性的少数者を含む少数者の権利を尊重し保護すべきことは憲法が強く要請するところである(上記福岡高裁判決)。個人の尊厳(憲法13条)と法の下の平等(憲法14条1項)という憲法の基本原理から、同性婚を認めない法制度は違憲であるとの結論を導いた一連の高裁判決は、多数決の原理では救済することが難しい少数者の人権を尊重擁護するという司法に期待されている責務(上記名古屋高裁判決)を果たそうとするものにほかならない。また、婚姻の成立及び維持について法制度による保護を受ける権利は幸福追求権の内実の一つであり憲法13条により保障されるとした福岡高裁判決は、「家族は、社会の自然かつ基礎的な単位であり、社会及び国による保護を受ける権利を有する。」とする自由権規約23条1項に適合的な憲法解釈を実践したものということができ、条約誠実遵守義務(憲法98条2項)を果たそうとしたものでもある。
そして、上記大阪高裁判決が指摘するように、相互に求め合う者同士が自ら選択した配偶者と婚姻関係に入ることができる利益は、現代社会を生きる上での個人の人格的生存と結びついた重要な法的利益であり、性的指向が同性に向く者がこれを享受できない現行の法制度は、性的指向を理由とする差別により個人の人格的利益を著しく損なうものである。性的指向に関わらず平等に婚姻ができるように法制度を早急に整備する必要がある。
当会は、2024年(令和6年)1月25日、法制度における性的指向及び性自認を理由とする差別を早急に解消するとともに、性的指向及び性自認を理由とする差別を禁止する法律の早急な制定を求める意見書を発出し、婚姻平等を実現する民法改正を求めた。日本弁護士連合会も2019年(令和元年)7月18日に同性の当事者による婚姻に関する意見書を発出して以来、同性婚の法制化を繰り返し求めており、全国各地の弁護士会も同性婚の早急な法制化を求める声明等を相次いで発出している。
個人を尊重し、幸福追求権をはじめとする人権について、立法及びその他国政の上で最大の尊重をすべきことは、国会及び内閣の憲法上の義務である(憲法13条)。この「最大の尊重」には「公共の福祉に反しない限り」との限定が付されているが、同性間で婚姻制度を利用できるようになっても、それにより他者の人権が制約されるなどの弊害すなわち公共の福祉に反する事態が生じるとは想定できず(上記札幌高裁判決、福岡高裁判決、名古屋高裁判決、大阪高裁判決)、男女間の婚姻のみを可能とし、同性間の婚姻を可能としないことに合理的な根拠はない(上記東京高裁判決)。「結婚の自由をすべての人に」訴訟において裁判所が憲法上の責務を誠実に果たしてきたことをうけて、国会及び内閣も法制度の実現という憲法上の責務の履行に直ちに取りかかるべきである。
当会は、同性婚を認めない法制度が憲法13条、14条1項、24条に違反するとの司法判断が多数積み上げられ、これまでの5つの高裁判決すべてで違憲判断がなされたことをふまえて、国会及び内閣に対して、同性間でも婚姻ができるよう、婚姻平等を実現するための法整備を直ちに行うことを、あらためて強く求めるものである。
2025年(令和7年)5月22日
京都弁護士会
会長 池 上 哲 朗
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